特定非営利活動法人 女性呼吸器疾患研究機構
NPO Women's Respiratory Diseases
Research Organaization

設立挨拶

患者さん/その他一般の方

 平成20年6月に東京都の認証を得て「特定非営利活動法人 女性呼吸器疾患研究機構」を設立しました。今後活動を積極的に行っていきたいと思いますので、ご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 

 わが国の平均寿命は大幅な伸びを示していますが、疾患感受性、老化の程度における男女の違いなど性差の存在を示唆しています。このことは人々の健康、健康の維持を考えるときに男性と女性を区別して考える必要性を示しています。現在各地域で「性差に基づく医療」、すなわち「男女がそれぞれに抱える問題と、それが健康に及ぼす影響を考慮して医療を行う」という活動が始まっています。この活動を通して行われる研究は、性差が幅広い疾患の病態や病因にアプローチする手段として有力な武器となりうることを示しています。しかしながらこのような活動は日本では欧米と比較しかなり遅れているばかりでなく、とくに呼吸器疾患において著しく遅れているのが実情です。

 まず肺がんでは、日本では男性ではがんによる死亡原因の第1位であるのに対して女性では2位ですが、アメリカでは男女ともに肺がんが第1位であり、女性では2006年の肺がんによる死亡は73,020人と推定され、第2位の乳がんと第3位の結腸がんの合計死亡数より多く、男性の90,470人に近い数まで増加しています。日本においては女性肺がんは確実に増加していて、女性肺がんの増加が日本人全体の肺がん増加の最も大きな要因となっています。肺がんとタバコの関係は明らかですが、喫煙女性は喫煙男性に比べタバコ由来の発がん物質の影響を受けやすく、男性喫煙者の2倍も肺がんになりやすいと報告されています。それなのに女子の方が映画やマスコミなどの周りからの影響を受けやすく、喫煙の開始につながりやすいとされ、一度喫煙を開始すると女性の方が禁煙に成功しにくく、再喫煙率も高いのです。同じ喫煙量においても、肺機能の低下や喫煙効果は女性の方が大きく、タバコ物質の体内への吸収が多くなると報告されています。さらにタバコを吸わない女性の肺がんの増加も問題になっています。そのうちの一因である受動喫煙ですが、発がん物質の多くは、タバコを吸った煙(主流煙)よりも、タバコをはいた煙(副流煙)に多く含まれています。タバコを吸わない妻の肺がん死亡率は、夫が非喫煙者よりもヘビースモーカーのほうが高いことが報告されています。タバコや大気汚染と全く関係のない女性肺がんも増加しており、その原因として欧米を中心に遺伝子やホルモンの研究が進んでいて、女性に多く認められるX染色体上に存在するがん増殖に関係する遺伝子と発がんとの関係や、性ホルモン受容体の性差の関係などが明らかになりつつあります。

 つぎに喘息という呼吸器疾患では、一般的に年少児では男児が多く、思春期を過ぎると女性に多くなります。男性が急性期の炎症が強いのに対し、女性では喘息の慢性の変化である組織的病変が進んでいるものと推測されていて、カナダでは、小児期では男性が多く、成人では女性が多いと報告されています。日本でも年少児は男児が多いが、年長になると女児の寛解率が低いと報告されています。これは女性の方が、成長に伴う呼吸機能の発達が早く止まるばかりでなく、加齢に伴う気道弾性が早く消失することに起因するものと考えられています。しかも女性は男性と比較して気管支径が細く、気道過敏性が高く、大気汚染に対する気管支の反応もおきやすく、咳の閾値が低いと報告されていますし、月経は喘息の増悪因子です。このように、喘息においても明らかな性差があるばかりでなく、喘息を含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)自体に性差があることはあまり知られていません。COPDは日本では圧倒的に男性に多い疾患ですが、欧米では女性にも多くみられ、男性と比較して著しく予後が悪いと報告されています。日本では喫煙率が高い男性が多いのですが、若年女性の喫煙率が上昇しているため、今後はわが国での急増が懸念されています。

 気胸という肺に穴が開いて肺がしぼんでしまう疾患は、痩せ型の若年男性に頻発する性差のある疾患として有名ですが、女性に起きる気胸は男性と比べ他に基礎疾患を有するものや、原因となる肺嚢胞の好発部位である肺尖部に所見がないものが多く、再発率が高く、難治性といわれています。このように女性気胸は男性と比べ特発性の自然気胸は少なく、異所性子宮内膜症が原因の月経随伴性気胸や、予後が極めて不良のびまん性過誤腫性肺リンパ脈管筋腫症(LAM)などの基礎疾患がさらに病態を複雑にしています。月経随伴性気胸は少子化などの原因で子宮内膜症が増加しているため確実に増加しています。ホルモン療法を行うのが原則ですが、実際には副作用中止例、難治例、無効例、再発例が多く、さらに月経困難症や不整が多いため、手術時に所見がなかったり、病理組織学的に所見がないこともあり、治療、診断がたいへん困難な疾患です。女性にしかみられないLAMは近年ある種の遺伝性疾患であることがわかってきましたが、肺移植以外に有効な治療法がないにもかかわらず、現在、厚生労働省特定疾患対策研究事業の対象疾患ながら、医療費補助の対象となる特定疾患治療研究事業の対象疾患には指定されていません。

 ほかに、転移性肺病変、膠原病性間質性肺炎、非結核性抗酸菌症など女性に高頻度に起こる呼吸器疾患もありますし、降圧剤の副作用の咳嗽発現が女性に多いこと、妊娠、体格の差、健康行動の差、ホルモンや生殖機能の差、遺伝子など、解明しなければならない問題がたくさんあります。

 私たちはこの研究機構を通じ、広く市民に対して最新の知識の普及などの啓蒙活動を行い、女性呼吸器疾患に対する関心を高め、その特異性の理解を得たうえで、心理、解剖、ホルモン、遺伝子などの性差の研究を行い、研究成果の発表、病因の解明、治療法の開発、性差に基づく医療への貢献を行うことによって、女性の健康に寄与したいと考えています。残念ながらこのような組織は世界で初めてです。私たちがフロンティアとなってこの活動を広げていきたいと思っています。

 多くの方々が私たちNPO法人女性呼吸器疾患研究機構の活動に、ご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 

特定非営利活動法人 女性呼吸器疾患研究機構
理事長 宮元 秀昭 


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