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Women's Respiratory Diseases Research Organization
特定非営利活動法人女性呼吸器疾患研究機構

新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーです。米国でのデータによれば、新型コロナワクチン(mRNA型であるファイザー社製およびモデルナ社製)接種後のアナフィラキシーは、高齢者を除く女性にほぼ限って生じています。64歳以上では男女ともゼロでした。この性差、年齢による差はなぜなのか。

最近の話題の中で性差を強く印象づけたのは、新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーです。米国でのデータによれば、新型コロナワクチン(mRNA型であるファイザー社製およびモデルナ社製)接種後のアナフィラキシーは、高齢者を除く女性にほぼ限って生じています。64歳以上では男女ともゼロでした。この性差、年齢による差はなぜなのか。さまざまな仮説が出ています。比較的有力視されている説として次のことが言われています。

ファイザー社製ワクチンの主成分はmRNAです。mRNAはリポソームという薄い脂肪の膜に包まれています。リポソームを安定的に保つためにポリエチレングリコール(PEG)がワクチン液には含まれています。PEGは、ワクチンが人間の体に入ったとき、リポソームを細胞内に取り込ませる役目をします。従ってmRNA型のワクチンにはPEGが欠かせません。mRNAと脂肪膜がアレルギーの原因物質になる可能性はもちろん否定できませんが、どちらも生体内に普通に存在するものです。そこから、PEGがアナフィラキシーの原因物質かもしれない、という話になりました。PEGは医薬品では緩下剤に使われています。医薬品以外で圧倒的に多く使われているのは化粧品です。非イオン性界面活性剤として乳液にたくさん含まれていますので、化粧品を多く使う女性は既にPEGに対して感作されているのではないか、そのために女性にmRNA型のワクチン接種後にアナフィラキシーが多いのではないか、という説が出てきたというわけです。

その真偽の程はさておき、ファイザー社製の新型コロナウイルスワクチン接種後のアナフィラキシーが日本では欧米の報告よりも多いことが注目されています。日本では医療従事者にファイザー社製ワクチンが接種されています。接種を受けた医療従事者約17万人のうち7人にアナフィラキシーが発生したというのです。そのほとんどが女性でした。ニューイングランドジャーナル医学誌の報告ではファイザー社製ワクチン990万余りの接種では47回のアナフィラキシー、すなわち22万5千回に1回のアナフィラキシーの頻度で、そのほとんどが女性でした。ところが日本の医療従事者では、2万7千回に1回のアナフィラキシーです。確かにニューイングランドジャーナル医学誌の報告より頻度が10倍近く多いことになります。

 

イギリスで発表された2つの研究で、40代と50代の女性に新型コロナ感染症での退院後、後遺症のリスクが高いことが示されました。多くは何か月も倦怠感や息切れ、ブレインフォグなどの症状が続いていると訴えています。

1つはPHOSPと呼ばれる研究で、中年の白人女性で、糖尿病や肺、心臓の病気などの基礎疾患がある場合は、退院後5カ月たってもコロナ後遺症を訴える確率が高かったという結果でした。研究を率いた呼吸器内科教授によると、およそ40歳から60歳で、少なくとも2つの基礎疾患のあった女性に、最も深刻な後遺症が長期化しました。研究は約9か月間の間にイギリスの病院を退院した男女1077人を調査したところ、多くが5カ月後も筋肉や関節の痛み、倦怠感、息苦しさ、ブレインフォグを中心に複数の症状を訴えました。不安神経症やうつ症状のような、臨床的に深刻と診断される精神状態が5カ月以上続いている人も全体の4分の1いました。さらに、心的外傷後ストレス障害(PTSD)も12%ありました。

もう1つの研究は国際重症急性呼吸器新興感染症協会が、327人を調査し、50歳未満の女性は男性や50歳以上に比べ、基礎疾患がなくても倦怠感が2倍、息苦しさは7倍、記憶や動作や意思疎通の問題もより多かったという結果でした。

PHOSPの研究に参加した医師の1人は、男性と女性の免疫反応の違いが女性にコロナ後遺症に多いことの説明になるかもしれないと指摘。中年期の女性には自己免疫が多いことが知られています。

新型コロナウイルス感染者のうち、女性の方が男性より倦怠感や味覚障害などの後遺症が出やすい傾向があることが、国立国際医療研究センターの調査で分かりました。とくに、倦怠感は約2倍、脱毛は約3倍。男女全体では4人に1人が発症から半年経っても何らかの症状を抱えていることも明らかになりました。

同センターは、2020年2月~21年3月までに、新型コロナから回復した患者対象の調査に参加した20代から70代の457人を分析しました。急性期の重症度や治療内容、長引いている症状の有無などを聞きました。分析した結果、女性の方が後遺症として倦怠感などが出やすいことが判明。脱毛は約3倍、倦怠感が約2倍、味覚障害は約1・6倍、嗅覚障害は約1・9倍でした。また、とくに若い人や、痩せ形の人は味覚・嗅覚障害が出やすかったという結果でした。発症から半年後に症状があった人は約26%で、1年後では約9%でした。軽症でも後遺症が長く続く人がいたということです。

女性の方が症状の出やすい理由についてですが、同センターの森岡慎一郎・国際感染症対策室医長は「明確には分かっていないが、急性期は男性・高齢者・肥満が重症化リスクとされているが、いくつかの後遺症の出現リスクでは逆だった。どうしてこういうことになるのか、原因究明を行っている」と話しています。

私の専門である息切れなどの呼吸器症状に限って言えば、1か月以内 約20%、100日ほど後 約5%、半年後 約4%、1年後 1.5%が後遺症として残っているのです。

もしも、今この瞬間、後遺症に悩む方がいらっしゃれば、ご相談を伺いますので、外来を受診してください。

 

NPO法人 女性呼吸器疾患研究機構  理事長

宮元 秀昭

 


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