WORED

Women's Respiratory Diseases Research Organization
特定非営利活動法人女性呼吸器疾患研究機構

新型コロナウイルス感染症はすでに第7波に入りました。重症患者さんは明らかに減っており、恐怖を抱く人々も減っています。しかし、第6波で後遺症を訴える人が確実に増えています。若い世代では、学校に行けなくなったり、仕事ができなくなったりと、毎日の生活に大きな支障を受けている人たちがSNSで訴えています。今回の第7波もたいへん心配な状況です。

ビデオで解説

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世界保健機構(WHO)では、他の疾患の影響ではなく2か月以上続いている症状を「コロナ後遺症」と定義しています。

だるい、息苦しい、頭がぼーっとして思考力が落ちるなどの症状が、感染から3か月以上経ってもみられ、海外では「long COVID」と呼ばれています。一度治まっても、再び現れることもあります。症状には様々な要因が絡んでいて、治療方法は定まっていません。ワクチン接種で後遺症の予防ができるという報告もありません。

前回、様々な研究で、40代と50代の女性に新型コロナ感染症での退院後、後遺症のリスクが高いこと、50歳未満の女性は男性に比べ、倦怠感が2倍、息苦しさは7倍、記憶や動作や意思疎通の問題もより多いこと、女性の方が男性より、倦怠感は約2倍、脱毛は約3倍、味覚障害は約1.6倍、嗅覚障害は約2倍、男女全体では4人に1人が発症から半年経っても何らかの後遺症を抱えていることなどを報告しました。

今回は、新型コロナの後遺症について、男性と女性では免疫の反応が異なり、症状の回復に差がみられるという、京都大学の上野教授の研究をご紹介します。

ウイルスは体に侵入すると細胞に感染しますが、「T細胞」と呼ばれる免疫細胞が、ウイルスに感染した細胞を狙って攻撃をするというウイルス排除の役割や、自分自身の免疫の暴走を抑える役割などを担っています

報道によれば、京都大学の上野英樹教授は、後遺症患者の血液からこのT細胞を解析し、その結果、強い倦怠感を訴える女性の場合、ウイルスを排除するT細胞と、その働きを抑えるT細胞の両方が過剰に作られることで免疫が暴走していてその結果ウイルスが完全に排除されないこと、また、嗅覚や味覚障害だけが残る患者については、ウイルスを排除するT細胞が極端に少ないことを発見しました。

感染した際に、ウイルスを排除するT細胞があまり作られない場合は、回復後もウイルスの欠片が体の中に残り、症状を引き起こすとみています。一方、男性ではウイルスを排除するT細胞があまり作られません。男性は新型コロナウイルスだけではなく、かぜの原因のコロナウイルスに対してもT細胞の反応が弱いのです。

即ち、免疫応答の違いで、後遺症は女性のほうが出やすいが、一旦後遺症が出れば、男性のほうが全身に散らばったウイルスのかけらを排除できないために、症状の回復が遅い可能性が示唆されました。
後遺症とワクチン接種の関連について、イギリス保健安全局は2022年2月15日、新型コロナウイルスのワクチンを2回接種した人は後遺症にかかりにくいとの調査結果を発表しました。

ワクチンを接種していない人に比べて後遺症が出る確率が半分程度で、同局は「ワクチンは重症化を防ぐ最善の方法であり、長期的な影響を減らすことにも役立つ可能性がある」としています。また、上野教授によりますと、女性の嗅覚・味覚障害や息苦しさ・動悸といった症状は、接種によって免疫のバランスが整うため早く改善に向かう可能性があるとのことです。一方、男性では改善がみられないのではないかとのことです。

したがって、少なくとも女性はワクチンを接種したほうが良いのではないかと思われます。

NPO法人女性呼吸器疾患研究機構  理事長

宮元 秀昭


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