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Women's Respiratory Diseases Research Organization
特定非営利活動法人女性呼吸器疾患研究機構

このコロナ禍の中、ストレスにより「喫煙を始めた」あるいは「禁煙していたのにまた喫煙を始めた」「喫煙量が増加した」という人が増えているように感じておりますが、皆様の周りはいかがですか?

「喫煙量が増加した」という女性が増えている

このコロナ禍の中、ストレスにより「喫煙を始めた」あるいは「禁煙していたのにまた喫煙を始めた」「喫煙量が増加した」という人が増えているように感じておりますが、皆様の周りはいかがですか?

この度、コロナ禍のストレスにより「喫煙量が増加した」という女性が増えているという調査結果が発表されました。「受動喫煙が増えた」と感じている女性も多いとのこと。これは、コミュニティアプリ「みんチャレ」を展開しているエーテンラボが5月に発表した調査によるものです。

その調査結果によると、コロナ禍により「喫煙量が増加した」という人の割合は、男性では21%、女性は38%と、女性は男性の約2倍でした。喫煙量は、男性では「かなり増加した」13%、「少し増加した」8%、女性では「かなり増加した」16%、「少し増加した」22%となり、男女とも喫煙量を増やした人は多いですが、女性はとくに「増加した」割合が高かったという結果でした。喫煙量が増加した理由は、「気分転換のため」35%、「孤独感や不安感、ストレスのため」28%、「生活習慣の乱れのため」21%、「在宅勤務によりいつでも吸える環境になった」15%でした。

日本たばこ産業(JT)が1965年から2018年まで続けてきた「全国たばこ喫煙率調査」によると、1966年は男性83.7%・女性18.0%の喫煙率でしたが、2018年の最後の調査では喫煙率が男性27.8%・女性8.7%まで低下しました。しかし先にも述べたように、2020年以降のコロナ禍では、女性は4割も喫煙量が増加したと答えています。男性の2倍です。現在の女性の喫煙率は一体どうなっているのでしょうか。

さらに、国立がん研究センターが行った「新型コロナウイルスとたばこに関するアンケート調査」では、「新型コロナによるステイホーム・在宅勤務などで同居人の喫煙による受動喫煙は増えたか?」という質問に対し、10.6%が「増えている」と回答しています。対して、減っていると答えた人はわずか1.6%でした。また、喫煙所が新型コロナウイルスの感染が拡大しやすい場所だと思っている人は59%でした。新型コロナウイルス対策の一環として、喫煙所や喫煙室を閉鎖、あるいは使用停止にすることに賛成する人は58%に上りました。受動喫煙の犠牲者は、言うまでもなく女性と子供です。タバコを吸わない女性の健康と命を守るために、ぜひとも喫煙所や喫煙室の撤去を期待したいと思います。

コロナ禍の中、どうしても禁煙できない人が、電子タバコであれば従来のタバコに比べ安全だと思って、電子タバコに変える人が増えています。しかし、残念ながら、電子タバコであっても心臓病や脳卒中のリスクは高くなるという研究も発表されました。「電子タバコがより安全だと考えるべきではありません」と、専門家は強調しています。若者を中心に急速に普及している新型の電子タバコを吸っていると、細い血管の拡張機能が低下し、血圧や心拍数が上昇し、血栓ができやすくなる可能性があるという研究を、ヨーロッパ呼吸器学会が発表しました。

新型タバコも、従来の紙巻きタバコと同じように健康に悪影響をもたらし、長期間吸っていると心臓病や脳卒中のリスクを高めるおそれがあるのです。研究は、スウェーデンのヘルシンボルグ病院の臨床医で、カロリンスカ研究所の研究員であるグスタフ・ライティネン氏らによるものです。

研究グループは、たまに喫煙しているが、それ以外は健康である18~45歳の22人の男女を対象に、ニコチンを含む電子タバコと含まない電子タバコを30回吸引してもらい、吸引前と吸引15分後、60分後に採血をして、血栓のできやすさを調べました。さらに、1週間以上の期間をおいた後にも同様の試験を行いました。その結果、ニコチンを含む電子タバコにより、血栓形成能は吸引の15分後に23%上昇し、60分後にもとに戻ることが明らかになりました。電子タバコにより、心拍数は66bpmから73bpmに増加し、また平均血圧も108mmHgから117mmHgに上昇。電子タバコにより、細小血管が一時的に狭くなることも確認されました。ライティネン氏は、「ニコチンはアドレナリンなどのホルモン分泌を刺激することが知られており、それにより血栓ができやすくなる可能性があります」と述べています。「電子タバコは比較的最近になって登場し、体にどのような影響をもたらすかはよく分かっていませんでした。今回の研究は、ニコチンを含む電子タバコが、血液中に血栓をつくり、細い血管の適応性を低下させる可能性があることを示しています。電子タバコは従来のタバコに比べ安全性が高いという印象を与える宣伝がされています。そのため、禁煙を試みるときに電子タバコを使用する人もいますが、今回の研究で、電子タバコの有害な影響についてのエビデンスが増えました。従来型のタバコか電子タバコかにかかわらず、ニコチンは心臓発作や脳卒中を引き起こす可能性があります。電子タバコがより安全だと考えるべきではありません」と、ヨーロッパ呼吸器学会タバコ管理委員会の委員長であるジョナサン・グリッグ氏は警鐘を鳴らしています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、過度の炎症、血小板活性化、内皮機能不全、およびうっ血などにより、動脈系・静脈系の両方で血栓性疾患を起こしやすくなるとの報告が蓄積されてきています。また、アストラゼネカ社のワクチンでは、稀に珍しいタイプの血栓症が起きるという報告があります。ワクチン接種後1ヶ月以内に生じ、男性に比べて女性、特に若い女性の方が頻度が高いと報告されています。しかし、上記のようにタバコによる影響も否定できません。

喫煙者が新型コロナウイルスに感染した際には、重症化しやすいというデータもあります。女性ばかりでなく、喫煙男性にとっても他人事ではないことを自覚すべきでしょう。禁煙したい人は、電子タバコに変えるのではなく、きちんと自覚をもって禁煙しましょう。

 

NPO法人 女性呼吸器疾患研究機構  理事長

宮元 秀昭


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